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「総理」 政治記者の真剣勝負  [読書]

元TBSワシントン支局長山口敬之氏の著書「総理」を読みました。
読んでみて、安倍首相はじめ内閣の中枢にいる方たちに対する見方がガラッと変わりました。

安倍首相や麻生副総理、菅官房長官、与謝野馨氏などと「サシ」で交流してきた人の記録なので、臨場感がありました。

わたしは、もともと渡部昇一氏の「裸の総理たち 32人の正体」で、安倍首相が短い在任期間で多くの法案、主に教育基本法に関連する事柄を通してきた人、ということは認識としてありました。
次に、小川榮太郎氏の「安倍晋三試論」で安倍首相が「理念の人」だということを知りました。
今回の「総理」は首相を取り巻く人たちがどういう人たちであるのかが、克明に描かれていたと思います。

当然なのでしょうが、首相の動きは何手も先を読んで行動しているということです。
またそれを支えているのが、大義を共有する優秀な官僚だということは、わたしにとって新しい発見でした。
わたし的には、江戸時代の盤石な基盤を築いた徳川を見るような感じがしました。

本書の見出しは次の通りです。

まえがき
第一章 首相辞任のスクープ
第二章 再出馬の決断―盟友の死、震災、軍師・菅義偉
第三章 消費税を巡る攻防―麻生太郎との真剣勝負
第四章 安倍外交―オバマを追い詰めた安倍の意地
第五章 新宰相論―安倍を倒すのは誰か
あとがきにかえて
山口敬之著 総理

著者は、
「総理大臣とはどういう仕事なのか。
私が体験し目撃した事実を公表することで、読者が
『日本という国で、平成という時代に、総理大臣を務めるべきはどういう人物か』
を考える材料にしてほしい」と、述べています。

ここまで書いて大丈夫?と思うような内容ですが、著者は次のように書いています。

【引用】
「取材対象に肉薄する」というジャーナリズムの本能と機能が国民の思考と判断を支える一助となっているか。そしてその一例である本書が、プロパガンダではなくジャーナリズムの仕事に属するものであるかどうかを、読者に判定してもらいたいと思っている。
山口敬之著 総理 17ページ

事実、本書は永田町を震撼させたということです。

「そこまで書いたのか」
など反響が大きかったようです。
それはそうですよね、山口氏も「この本に登場する人からすれば、絶対に世に出ないと思っていた話が書かれているわけですから」と述べています。

他方「そうそう、確かにああいう経緯だったね」とも。

参考資料
「だから私はTBSを退社し、この一冊を著した」~永田町を震撼させたエース記者の回想

「自分が永田町で見聞きしたことは、必ずオープンにしなければならない。すぐに公表することができない話であっても、いつか必ず書く。それが記者だと思っています」
これはジャーナリストの「矜持」なのだと思います。

さらに次のようにも言っています。

本当のジャーナリストが自らの支えとするのは「事実に殉じる」という内なる覚悟だ。だからこそ記者という仕事には矜持が求められる。
山口敬之著 総理 235ページ

その「真剣勝負」の兆戦は、それは本書を読む行間からビンビン伝わってきました。
印象に残った言葉を抜粋しました。

―――――
唯一の例外が菅義偉だった。
「私は、ご存じのように昭一さんのことを、政治家としてとても尊敬していました。しかし、安倍さんや麻生さんの昭一さんに対する思いは、私よりはるかに強くて深いと思います。私の気持ちは、安倍さんと麻生さんの漢字に託させてください」
菅の口調は、中川に対する敬意に満ちていた。
82ページ 
(山口氏が中川昭一夫人の郁子さんから「戒名」の文字を託されたとき、山口氏は生前中川氏が親しかった人たちに依頼した)

―――――
麻生は亡くなった中川昭一に二つの言葉を送った。
「政治家は、わが身無念と思えども、国のためなら本懐なり」
「死せる中川、生ける保守を走らす」
85ページ

―――――
不敵な笑みの最後にこう付け加えた。
「あの夜の山口君の電話がなければ、今日という日はなかった。ありがとう」

一方の、安倍はこの頃私にこう述べている。
「菅さんは恐ろしい人だね。絶対敵に回しちゃいけない人物だよ」
113ページ 
(安倍首相が総裁選に出馬する決意を固めたとき)

―――――
安倍はここで少し考え込んだ。そして邪念を振り切るように続けた。
「でも、俺が誠心誠意一生懸命説明すれば、麻生さんなら絶対に分かってくれると思うんだよ。『所詮ゼニカネの話じゃないですか。もっと高い目標を目指すためには、麻生さんの力が絶対必要なんです』ってね。これは俺の本心だから。国家観の問題だから」
165~166ページ 
(消費税を巡る攻防で)

―――――

「総理大臣になることや総理大臣であり続けるおとが重要なのではなく、総理大臣になって何をなすかが重要なんです」
これは著者が、次々と国民に不人気の法案に取り組む真意を尋ねた時、首相が語った言葉、ということです。

「強い経済」、「安心できる社会」も安倍首相の大目標である「誇りを持てる国づくり」を実現するための方便と言い切るところは、やはり安倍内閣の懐に入って取材してきた人の言葉だな、と思いました。

安倍首相を始め官邸と「真剣勝負」してきた人の記録として、読み応えがありました。


総理 (幻冬舎単行本)

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  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/06/08
  • メディア: Kindle版



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