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勝者なき大乱 「応仁の乱」の著者呉座勇一氏 [雑学としての歴史]

応仁の乱について、国際日本文化研究センターの呉座勇一助教の話です。
読売新聞の12月21日の文化面に、「大乱長期化の実態 克明に」と題して掲載されていたのでシェアしますね。

10月に中公新書より「応仁の乱」を刊行、7刷5万8000部と好調のようです。
応仁の乱は拙ブログでも9月11日にご紹介しました。
日本史上に大断層が生じ、この流れは戦国時代へと続いていきました。
天下の大乱 応仁の乱

1467年に勃発した大乱で、諸大名が東西両軍に分かれて参戦した戦いは10年以上続き京都を焼け野原にしました。

記事によると、大乱がなぜ起き、なぜ長期化したかを説明するのは難しいとしています。
「当時生きていた人たちでさえ、よくわかっていなかったのだから、我々が簡単にわかるはずがありません」、と著者の呉座勇一氏は仰っています。
一般的には、室町幕府の8代将軍・足利義政が文化にのめり込み政治家として力量不足で、妻の日野富子が息子の足利義尚を将軍にしようと暗躍したという見方が知られていますが、これは軍旗物「応仁記」によるところが大きいそうです。

「物語だから話を面白く作ってしまうが実際は違う。義政は本人なりに責任感があり、乱を終わらせようと努力もしている。きちんとした史料には、日野富子が乱の勃発に関与した形跡は見られない」と。

わたしは足利義政の文化人としての深さに興味を持っていたので、ただの無能で怠惰な将軍だとは思わなかったのですが、乱の研究は、個人の問題としてではなく、室町幕府の政治体制の問題として論じられるようになっているそうです。

呉座助教は、乱を体験した奈良・興福寺の僧・経覚と尋尊の日記を根拠に「応仁の乱」を調べ直しその成果を一般に伝えるために、本書を書かれたということでした。

【引用】
乱のきっかけは、山名宗全が畠山氏の内紛に乗じてクーデター的に幕府の実権を握ったことだ。「宗全は別に大乱を起こそうと思っていたわけではなく政権を取れば良かったのに、細川勝元が反撃したことで乱が始まった。反撃されると思っていなかったのだろう。見通しが甘かった」

東西両軍とも短期決戦を志向したにもかかわらず、ずるずると長期化し、11年におよんだ。「参加する大名が増えすぎ、全員納得できる終わらせ方ができなかった」ためだ。そして結果は、一人の勝者も生まなかった、とみる。山名、細川を始め守護大名は力を失い、代わって守護大名の重臣クラスが主人を乗り越える形で戦国大名化していく。

「勝者がいなかったので、勉強しても爽快感はない。けれど、そういうものの方が、織田信長の桶狭間の戦いのような鮮やかな成功例より学ぶ意味がある」という。室町時代は歴史ファンの人気も今ひとつ。だが、現代との共通点を見出せば、がぜん面白くなる。「応仁の乱では、誰が決めるか、誰が責任を取るか、が曖昧なままだらだらと時間だけが過ぎていくという、日本的な意思決定の欠点がもろに出てしまった。室町時代って、極めて日本的な時代だと思うんです」
読売新聞12月21日 17面

室町幕府は足利尊氏が軍事貴族として京都で開いたものですが、成立当初は南北朝の騒乱期に当たり政治基盤も整っておらず、政権としては脆弱な基盤でした。
南朝を事実上滅ぼした3代義満の時代に政治が安定し、6代足利義教の時代には幕府への権力が集中しています。諸大名の掌握が進み、幕府として絶対的権力を持っていた時代でした。
しかしこの義教が重臣赤松満祐に暗殺されたことで、政権としては弱体化していったと思われます。その後名目上の将軍職は15代まで続きます。
織田信長が天下を掌握すると将軍義昭は抵抗しますが、追放され室町幕府は滅びました。

曖昧さが日本的だというのはその通りかもしれません。
先の大戦でも、戦略の曖昧さは多々見られその指摘が当てはまります。
強いリーダーとは何か、今の時代にも求められる課題です。

呉座助教は「応仁の乱では、思い通りに事が運んだ人は誰もいなかった」と述べています。
うねりのように始まった革命という感じもしますが、司馬遼太郎は「革命意識のない革命」と表現しているそうです。そこに英雄は誕生しなかったというところが、この乱のあいまいな部分でもあり、戦国時代で天下の雄を決めなければならなかった、とも思えます。

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