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「エコロジーの先駆者」 南方熊楠生誕150年 [新聞記事]

今年は「エコロジーの先駆者」南方熊楠(みなかたくまぐす)生誕150年ということです。

minakata.jpg

引用元:南方熊楠生誕150周年記念事業

読売の記事では、世界文化遺産に登録された沖ノ島について、「強烈なタブー」が島を盗掘から守ってきたと書かれていいました。
さらに「神道とは、タブーのシステムである」と見抜いた生物学者・南方熊楠の言葉に思いを馳せているのですが、昨年の「名言巡礼」で熊楠の言葉を紹介していたので、今回の記事と合わせてまとめました。

南方熊楠は、神道には難しい道徳論や心理論はないが、「多大繁雑の斎忌taboo systemをもって成った慣習条々(不成分律)」と捉えており、人々を律するタブーがある、「神道とは、タブーのシステムである」と説明しています。

【引用】
明治時代、政府は、国家宗教としての体裁を整えようとして、全国にある無数の社を、1町村1神社に統合しようとした。この神社合祀政策に、熊楠は11年にわたって反対運動を行う。タブーによって守られてきた鎮守の森が、いかに貴重なものであるかを説いて回った。小さな社を廃止すれば森とともに人々の心のよりどころも失われてしまう。

この時代にエコロジーという言葉を使っている。多様な自然と文化を守ることの意義に気づいていた。今になって熊楠が正しかったことがわかる。お不言様の世界文化遺産登録が、証明である。(読売新聞7月19日11面)

南方熊楠は粘菌という微生物の世界的研究者です。
朽木などに発生する黄色いカビのようなものですが、調べてみると多種多様に存在しているんですね。

引用元:変な生き物☆真性粘菌
粘菌.jpg


引用元:粘菌変形菌のスマホ壁紙
変形粘菌.jpg


南方熊楠は1867年和歌山市に生まれました。
1886年、19歳の時に渡米し、フロリダの山野で採集を通して植物学を学び、今度は英国に渡り、大英博物館の図書室で考古学、人類学、民俗学、宗教学などの文献を読みあさります、まさに水を得た魚のように知識を吸収していったようです。
39歳で帰国し、故郷の和歌山県内を転々としながら、粘菌を研究し熊野の山々では、樹木に付いた新種を次々と発見しています。

南方家は当時、地元の長者番付に載るほどの資産家でした。
私費留学が一般的ではなかった明治期に留学を果たしたのは、熊楠の父や弟常楠(つねぐす)が費用を出したことが上げられます。十数年の海外生活で支援した費用は、現代に換算すると数億円ともそれ以上とも。

常楠は献身的に兄を支援したが、熊楠はそれほど感謝しているようでもなく、ぞんざいな文面で度々、無心する手紙やはがきを南方家に送り付けた(読売新聞2016年8月21日)、としています。
ひ孫の康治さんはつぎのように話しています。

「熊楠さんは親の形見分けのつもりで受け取っていたのでしょうが、他人にはわからない兄弟愛もあったはず。後に世界的に認められた研究を曽祖父が支えられて本当に良かった」(同)

奇抜な言動や行動は逸話になっていて、水木しげるさんの漫画「猫楠」には、自宅では素っ裸で過ごし、大酒を飲んでは暴れるというような奇人としての熊楠が描かれているそうです。

40代にのめり込んだ森林保護運動で、役人が集まる集会に押しかけて警察に連行されるのですが、拘留された留置場でも粘菌を発見しています。
熊楠が晩年の文献で述べた言葉が印象的です。

【引用】
「多くの菌類や黴(かび)菌は、まことにせっかく人の骨折って拵(こしら)えた物を腐らせ、悪(にく)むべきのはなはだしきだが、これらが全くないと物が腐らず、世界が死んだ物で塞がってニッチも三進(さっち)もならず」と続け、害虫も無益なものではないと力説した。(同)

昭和天皇も粘菌の研究をされていますが、熊楠とのエピソードが残されています。
1929年、昭和天皇が和歌山訪問の折、当時は戦艦長門の艦上で進講しています。当初25分の予定が、陛下の希望で5分延長され、熊楠は粘菌標本を献上します。普通常識では桐の箱に入れて渡すところをキャラメルの箱に入れて渡したということです。

粘菌わたしは苦手なのですが、生物が土にかえるのを手助けしているように見える微生物の世界、熊楠にとっては魅力にあふれた小宇宙だったのでしょうね。

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